植物が持つ力に魅せられ、日本にまだ「アロマセラピー」という言葉さえほとんど知られていなかった1996年、イギリスへ渡り、その本質を学びました。
世界各地の植物から生まれる精油に触れるなかで、次第にひとつの想いが芽生えました。
「日本の風土で育ち、日本にしか存在しない植物から、日本ならではの香りを創りたい。」
その答えとして辿り着いたのが、杉でした。
杉は日本を代表する固有の樹木です。
古くから神社や寺院の境内に植えられ、人々は杉並木を神が通る道として敬ってきました。
風が杉の梢を揺らす音は「神鳴(かみなり)」と呼ばれ、神の気配を知らせるものと考えられていました。
そんな杉には、日本人が古来より感じてきた精神性や自然観が宿っていると感じています。
静寂の中に凛とした強さを秘めた、日本にしかない香り。
その香りを形にするため、全国さまざまな土地の杉を蒸留し続けました。
そして出会ったのが、秩父の杉です。
私たちの精油は、秩父地域で育った杉と武甲山の伏流水を用い、秩父の空の下で蒸留しています。
水の質、蒸留の温度、時間のかけ方。
ほんのわずかな違いが香りを変えてしまうため、理想の香りに辿り着くまでに多くの試行錯誤と時間を重ねてきました。
機械任せではなく、植物の状態を見ながらすべての工程を手作業で行っています。
枝葉を選び、刻み、静かに蒸留器と向き合いながら、香りの立ち上がりに耳を澄ます。
その一滴一滴に、植物と向き合った時間が凝縮されています。
こうして生まれた秩父杉精油は、神社の森に足を踏み入れた時のような清らかさと、
山々が何百年も育んできた生命力を感じさせる香りとなりました。
私たちが届けたいのは、単なる香りではありません。
秩父の森が持つ静寂。杉が秘める力強さ。
そして、日本人が古くから自然と共に生きる中で育んできた心。
一滴の香りを通して、秩父杉の生命力と、日本の森の美しさを感じていただけたら幸いです。